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【R5】イギリス|クラウン(Spinkパターン・アルミニウム)|花紋外周・Plain edge|1887年|NGC PF64 Cameo|Top Pop

【R5】イギリス|クラウン(Spinkパターン・アルミニウム)|花紋外周・Plain edge|1887年|NGC PF64 Cameo|Top Pop

【R5】イギリス|クラウン(Spinkパターン・アルミニウム)|花紋外周・Plain edge|1887年|NGC PF64 Cameo|Top Pop

基本情報

発行(制作)地:ロンドン企画/ニュルンベルク製作(Spink & Son × L. Chr. Lauer 工房)
年号:1887年(ローマ数字表記 MDCCCLXXXVII)
額面:クラウン(5シリング)/パターン
品位:アルミニウム(Al)
重量:約14.5 g(出品記録による)
直径:約39 mm
エッジ:Plain(無刻)
打向き:en médaille(上下同向)
鑑定:NGC PF64 Cameo(Top Pop)[Cert. 1523682-001]
文献:ESC 349(R5)/Bull 2689(R5)/L&S 87 dies 1 B a(“SPINK & SON” below date)
製作:Joseph Rochelle Thomas(企画)× Spink & Son(ロンドン)× L. Chr. Lauer(ニュルンベルク)
打刻枚数:推定10枚前後(Sovereign Rarities, Lot 95)
来歴:Ex St. James Auction 14–15(2010年9月30日, Lot 556)→後年個人蔵

本コインは、1887年のゴールデン・ジュビリーを記念して Spink & Son が企画し、ドイツ・ニュルンベルクの名門ラウアー工房(L. Chr. Lauer)で打刻されたクラウン・サイズのアルミニウム製パターンです。
文献希少度は ESC 349 = R5、Bull 2689 = R5 に整理され、シリーズ中でも最上位の稀少タイプに位置づけられます。
R5は「極稀少(Very Rare)」を意味し、総打刻数はおよそ10枚前後と伝わります。

鑑定は NGC PF64 Cameo。NGC登録では同型3枚のうち最高位の評価を受け、Top Pop(最上位)として記録されています。
Sovereign Rarities(Lot 95, 2024年)も同様に「現存3例のうち最上位」と注記しており、保存・打刻ともに最良のコンディションを保っています。

Joseph Rochelle Thomas(1865–1938)が Spink & Son と協働で企画し、ラウアー工房によって製作された一連のパターン群の中でも、本アルミニウム版は実験的かつ美術的完成度の高い一枚です。
当時アルミニウムは希少金属であり、その軽量性・反射性から、金属の未来素材として注目されていました。結果として、この素材での試作は数枚にとどまり、現存個体は学術資料級とされています。


表面(オブバース)

女王ヴィクトリアの左向き肖像。
デザインはジュビリー・ヘッドの変種で、頭上の王冠、ヴェールの透彫、胸元のレースやリボンまで立体的な彫線を保ちます。
トランケーション(切り台)はプレーンで、J.E.B.やSpink & Sonなどの刻銘を欠き、試作段階の純粋な肖像試験版であることを示します。

銘文は「VICTORIA. BY. THE. GRACE. OF. GOD. QUEEN. OF. GREAT. BRITAIN. EMP: OF. INDIA.」と英語で表記され、二重線に囲まれたバランスの取れた構図。外周を取り巻くバラ・アザミ・シャムロックの花紋が英国統一の象徴を形づくり、ジュビリー期特有の華やかさを添えています。

PF64 Cameoらしく、鏡面の反射と肖像のフロストが際立ち、アルミニウム特有の柔らかな光沢が精緻な彫刻線を引き立てています。表面の磨きと保全状態は特筆すべき水準で、金属疲労や酸化斑も最小限に抑えられています。


裏面(リバース)

王冠付き四分割盾の紋章を中心に、左にライオン、右にユニコーンを配置。
上部に「FIVE SHILLINGS」、下部にローマ数字の年号「MDCCCLXXXVII(1887)」が刻まれ、最下部には「SPINK」および「& SON」の刻印が左右に分かれて配されています。
その下には英国三花(バラ・アザミ・シャムロック)が配され、外周を飾る植物装飾は表面と完全に対応した美しい統一デザインを構成。
打向きは en médaille(上下同向)で、芸術作品としての視覚的均衡を重視しています。

L&S(Lauer & Spink)による記録では、このリバースは「Type 1B a」に該当し、通常型に対して下部銘を追加した設計。花紋帯や浮彫線の仕上げは、同シリーズの他素材(銅・白銅)と比較しても際立つ精緻さを保ちます。


歴史的背景

このパターン・シリーズは、バーミンガムのコインディーラー Joseph Rochelle Thomas と、ロンドンの名門 Spink & Son が共同で発案した民間試作群です。
ジュビリー・クラウン(公式銀貨)の発表に先立ち、民間レベルでもデザイン提案や素材研究が活発化しており、Thomas と Spink はラウアー工房(ニュルンベルク)に製作を依頼。

ラウアー家は18世紀から続くドイツの名門メダルメーカーで、1880年代には蒸気駆動による金属プレスを導入し、硬貨・メダルの量産技術を確立していました。
本パターン群はその高精度な技術力を活かした成果であり、ロンドン市場では「English Proof and Pattern Crown Size Pieces」と呼ばれ、造幣史上の独立試作群として位置づけられています。

1887年当時、アルミニウムは極めて高価で、銀以上に貴重な素材とされていたため、試作段階での採用は先進的な試みでした。
同シリーズには、金・銀・銅・錫・アルミと複数素材が存在しますが、アルミ版は耐久性が低く、保存例が少ないことから特別な位置づけを持ちます。


市場評価と希少性

文献上は ESC 349=R5、Bull 2689=R5。R5は「極稀少」で、通常確認できるのは5〜10例程度
Sovereign Raritiesによる最新調査では、アルミ版は10枚前後の製造と推定され、オークション出現頻度も数年に一度あるかないかの水準です。

本コインは NGC PF64 Cameo、Top Pop(最上位)として登録されており、統計的にも他に上位グレードは存在しません。アルミニウムという極めて繊細な素材ながら、打刻線と反射のバランスが見事に保たれており、19世紀末の造幣実験の成果を完璧な状態で伝えています。

同シリーズの金属別比較では、銀・銅の試作よりもアルミ版が著しく稀で、特にカメオ級の反射を維持した個体は、主要オークションでの出現がほとんど確認されていません。
PF64 Cameoという高評価に加え、Spink & Son 刻銘入り・花紋外周付・en médaille という三要素を兼ね備える点で、学術的にも市場的にも最上位評価に値します。


1887年ジュビリー期における英国貨幣試作の到達点を示す、Spink & Son × Lauer 工房によるアルミニウム・クラウン。
R5級の稀少性、NGC PF64 Cameo(Top Pop)という唯一無二の品質、そして花紋帯がめぐる象徴的意匠が融合した本作は、単なる試作品ではなく、ヴィクトリア期の造幣美術と技術革新を象徴する金属芸術の結晶といえます。
軽やかな銀白色の輝きの中に、19世紀後半の産業革命期がもたらした素材革新とデザイン美学の頂点が刻まれています。
レビュー

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