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1849年 イギリス領インド ヴィクトリア女王 プルーフ・パターン・ルピー NGC PR64(S&W-3.30 Type A/SG)

1849年 イギリス領インド ヴィクトリア女王 プルーフ・パターン・ルピー NGC PR64(S&W-3.30 Type A/SG)

1849年 イギリス領インド ヴィクトリア女王 プルーフ・パターン・ルピー NGC PR64(S&W-3.30 Type A/SG)

grundlegende Informationen
発行地 イギリス領インド(British India)
年 号 1849年
額 面 1ルピー
分 類 プルーフ・パターン(Type A / SG)
参考番号 KM-PnI13、S&W-3.30、Prid-64
デザイン ウィリアム・ワイオン(William Wyon)
鑑 定 NGC PR64
鑑定番号 4537541-019
材 質 銀
直 径 約30 mm
来 歴 Ex Heritage Auctions
備 考 NGCポップレポート:PR64が確認されている範囲で2枚(上位帯)

1849年にロンドン王立造幣局で試作されたプルーフ・パターンのルピーであり、イギリス領インドの通貨統合政策とヴィクトリア朝中期の美術的潮流が、一枚の銀貨の上で静かに交差している。本コインは、ウィリアム・ワイオンが刻んだ若いヴィクトリア女王の端整な肖像と、裏面に配された月桂冠と ONE RUPEE の穏やかな構成によって、当時の造幣局が貨幣を行政・象徴・美術の三層から再構築しようとした意図を、そのまま金属面に宿す作品である。1849年ルピーはプルーフのみが制作された事実上のパターン貨であり、東インド会社の銀ルピー標準化の過程において、設計思想を示す具体的な見本として造られた。

銀肌にはブルーからパープル、さらにゴールドへと移ろう自然な虹彩が広がり、ワイオン作品に特有の線刻の明晰さをやわらかく引き立てている。プルーフ打ちの鏡面とフロストの対比がもたらす奥行きは、流通貨では得難い静かな緊張感を帯び、コインそのものの物質性と意匠の均衡が高い水準で保たれている。

NGCではPR64が上位帯を形成しており、発行形態が限定的な本タイプにおいては事実上の最高鑑定帯(Top Pop)として扱われる位置にある。本コインもその上位群に属し、素材・線刻・保存状態の三点において、1849年ルピーの現存個体の中でも特に整った印象を残している。意匠の落ち着いた均衡、植民地行政の文脈、そしてTop Pop帯に属する保存状態の良好さが重なり、1849年プルーフ・ルピーの体系の中でも確かな存在感を示す一枚である。

Oberfläche (Vorderseite).

若いヴィクトリア女王の左向き肖像は、ウィリアム・ワイオンの後期様式を示す清澄な線刻で構成されている。輪郭線は均質で、金属面との境界が明瞭に保たれており、ロンドン王立造幣局のプルーフ打ちに特有の「エッジの立った陰影」が確認できる。髪束の波状表現は、単なる装飾ではなく、ワイオンが用いた細かな刻線(fine linear graving)によって構築されたもので、流通貨よりも密度の高い彫りが施されている点に、パターン貨としての制作意図が読み取れる。

周囲の碑文 VICTORIA QUEEN は、英国本国貨に見られるラテン語 REGINA とは異なる植民地仕様であり、「王名の英語表記を優先する」という当時の行政的基準を反映している。書体は均整の取れたローマン体で、過度なセリフや飾りを排した実務的デザインが採用されている。これは王立造幣局が東インド会社の要請に応じて、視認性・識別性を重視した設計を行っていた証左のひとつであり、文字間のカーニングや高さが精密に調整されている点も、流通貨とは異なるパターン仕様の特徴である。

金属表面には、1840年代ロンドン製プルーフでよく見られる“鏡面とフロスト”の対比が認められ、肖像に施されたフロストは粒度が細かく均質で、光の拡散を抑えながら輪郭線の明晰さを保っている。銀灰色の地肌には、青から金色へと移ろう虹彩が重なり、縁部から中心へ向かって緩やかな濃淡を描く。このようなトーンは、銀特有の硫化・酸化による自然な変化とみられ、人工的処理に特有の均質な色膜とは異なる印象を与えている。こうした虹彩のあり方は、保存環境が良好であった個体にしばしば見られる特徴で、19世紀プルーフ銀貨を評価する際にも一つの観点となる。

デンティクル(鋸歯状縁取り)は一定間隔で整然と刻まれており、この時期の王立造幣局製プルーフに見られる仕様とよく整合している。打刻は十分な圧がかかっており、縁部に向かう金属流動も均質で、プルーフ仕上げを意識した強めのストライクであることがうかがえる。こうした特徴は、単なる流通用の打刻とは異なる配慮がなされていることを示しており、本コインが「Proof-only issue」として位置づけられている性格とも自然に響き合っている。

全体としてオブバースは、彫刻美と資料性が調和した面構成であり、ワイオンの造形理念が植民地貨幣の仕様に合わせて調整されながらも、線刻の明晰さ・輪郭の緊張感・プルーフ特有の仕上げが明確に保持された、一級のパターン銀貨としての性格を備えている。

Rückwärtsgang (Rückwärtsgang)

裏面は、中央に刻まれた ONE RUPEE の碑文を核とし、その周囲を月桂冠が静かに囲む構成をとる。文字列は均整の取れたローマン体で、縦線の強さと横線の細さが明瞭に保たれ、金属面との境界線も鋭い。線刻の深さと端部の仕上げから、プルーフ打ちのために最適化された金型が用いられていたことがうかがえ、流通貨に比べると文字のコントラストがより明確に浮き上がるのが特徴である。

月桂冠は左右対称の構成を採りつつも、葉の刻線は一枚ずつ形状が調整されており、ワイオンが古典文様を英国的な実務デザインへ翻訳する際に用いた抑制的な美意識が読み取れる。葉脈は過度に写実へ寄らず、あくまで象徴としての均質性を維持し、中央の碑文を装飾で圧迫しないよう配慮されている。この月桂冠は、単なる装飾ではなく「価値単位としてのルピー」を強調する視覚的フレームとして機能しており、当時の植民地貨幣にみられるデザイン思想をよく体現している。

金属表面には、オブバースと同様に鏡面とフロストの対比が見られ、特に文字周囲のわずかなフロストが碑文の可読性を引き立てている。銀灰色の地肌には青、紫、金色へと緩やかに移ろう虹彩が認められ、縁部に近いほど色層が厚く、中央へ向けて徐々に薄くなる傾向がみられる。これは銀特有の硫化・酸化の進行によって生じた自然なトーンと考えられ、人工的処理の均質な色膜とは異なる表情を呈す。プルーフ銀貨におけるこうした虹彩は、保存環境の良好さと長期安定性を示す一指標として評価される。

縁部のデンティクルは整然と刻まれ、間隔・深さともに1840年代ロンドン製プルーフに見られる仕様と調和している。打刻圧は十分で、金属流動(metal flow)は中央から外周へ向かって均質に広がり、文字・葉・縁部が明確に浮き上がる。これらの特徴は、通常の流通用打刻ではなく、プルーフ向けに調整された強めのストライクが施されたことを示唆しており、本コインが「Proof-only issue」という制作背景と自然に呼応する。

全体としてリバースは、碑文・月桂冠・外周の三要素が互いを圧迫することなく配置され、図案の間に生まれる余白が秩序と静謐さを保つ。記号性(価値単位の提示)、装飾性(古典文様の引用)、技術性(プルーフ打刻の明晰さ)が一体となり、1849年ルピーをパターン銀貨として際立たせる造形上の完成度を示している。

【歴史的背景】

19世紀半ばのイギリス領インドでは、通貨制度の統一が喫緊の課題となっていた。ムガル帝国期以来の多様な貨幣体系、地域ごとに異なる単位や銀純度、さらには諸藩王国の独自貨幣が併存し、流通上の混乱が長く指摘されていた。東インド会社は統治権の確立と行政合理化の一環として、銀ルピーの標準化を中心とした制度改革を進め、すべての地域で一貫した貨幣体系を整備しようとしていた。

この流れの中で、ロンドン王立造幣局はインド向け貨幣の意匠と仕様の再検討を行い、複数の試作型(パターン)を制作した。1849年ルピーはその一連の試行の中に位置づけられ、実務上は「Proof-only issue」の形式を取りつつ、制度改革の理念を視覚化する役割を担ったものである。すなわち、この年号のルピーは流通貨としての発行を目的とせず、造幣局の意匠検討と標準化のための見本(pattern / model)として扱われた。

その背景には、英国本国で進んでいた貨幣表象の整理と象徴体系の再構築があった。王権・行政・記号性をどのように組み合わせるかという問題は、ヴィクトリア朝の貨幣デザイン全体に共通するテーマであり、ウィリアム・ワイオンの作品はその焦点に位置していた。本国のソブリン金貨やメダルで培われた古典主義的な造形が、植民地行政の文脈に応じてどのように変奏されるべきか──1849年ルピーはその問いに対するひとつの応答でもある。

EAST INDIA COMPANY を明確に掲げた裏面構成は、地理的・政治的権限の所在を明示すると同時に、その統治の下で多民族・多言語世界がひとつの貨幣基準へ収束していく過程を象徴的に示している。英語と地域文化の書体の併置、月桂冠の古典性、ヴィクトリアの若い肖像──これら異質な要素が一枚の中に共存している事自体が、帝国行政の複雑さと、その上に構築されようとした新しい価値体系の反映といえるだろう。

1849年プルーフ・ルピーは、単なる試作貨ではなく、制度史・美術史・象徴表現が交わる交点に立つ作品であり、後年のインド貨幣統一の流れを読み解く上でも重要な位置を占める。

 

【デザインと象徴性】

本コインの魅力は、華美に流れず、しかし単純化にも陥らず、統治者像・行政表示・文化的要素を慎ましい均衡の中にまとめ上げた点にある。ウィリアム・ワイオンが確立した古典主義的な造形語法──輪郭線の明晰さ、抑制された象徴配置、理想化された肖像表現──は、本国貨だけでなくインド向け貨幣にもそのまま適用されたわけではなく、現地の文化的多層性と行政要請に応じて細やかに変奏されている。

オブバースでは、若いヴィクトリアの肖像に過剰な権威性をまとわせず、端整な理想像として提示することで、統治の“象徴としての王”を静かに表す。英国本国貨ではラテン語碑文 REGINA が伝統的儀礼性を担うが、本コインでは英語の QUEEN が採用され、植民地行政における実用性と明示性が優先された。そのため、肖像は古典主義を基調としながらも、碑文はより行政的語法へと収斂しており、造形の中に二つの価値体系が自然に同居している。

裏面の構成はさらに興味深い。英語の ONE RUPEE を中心に置きながら、その下にナスタアリーク体風の地域書体を併置することで、言語的多様性を一枚の中に共存させ、EAST INDIA COMPANY という行政主体の上に広がる文化的レイヤーを丁寧に扱っている。月桂冠は古代西洋の象徴体系に属するが、過度な強調を避けた抑制的な線刻により、英語の額面と地域書体との間に柔らかな橋渡しを果たしている。

こうした構成は、ワイオンの造形理念と植民地政策の要請が静かに交差する地点に生まれたものであり、象徴を強く打ち出さずとも、多言語・多文化を含む広域統治の姿を穏やかに表象している。記号・言語・古典表象・行政表示の四層が干渉せずに共存する美質は、19世紀英国貨幣彫刻が国際的課題へ向き合ったひとつの到達点ともいえるだろう。

本コインのデザインは、単に美しく整っただけではなく、制度・統治・文化の多層性を、抑制された造形によって静かに結び合わせる希有なバランスを持っている。その点にこそ、1849年プルーフ・パターン・ルピーが、今日なお観賞に耐える深さを備えている理由がある。

【市場評価】

1849年パターン・ルピーは、流通貨としての量産が行われなかったため、市場に現れる個体数はもともと多くなく、取引記録も限られたものにとどまる。特にプルーフの良質な保存状態を保った個体は、19世紀前半の銀貨に共通する経年変化や保管環境の影響を考えると、現存数以上に入手しにくいカテゴリーとなっている。そのため、国際オークションに登場する頻度も年ごとに大きく変動し、決して恒常的に供給が見られるタイプではない。

市場における需要は、ヴィクトリア期のパターン貨全般に対する関心の高まりとともに、近年緩やかに安定してきている。とりわけ本国貨とは異なるデザイン体系をもつ植民地貨幣の試作群は、王立造幣局の造形思想を読み解くうえで重要な位置を占め、収集分野として独自の評価軸が確立されつつある。1849年ルピーは、その中でも実質的に“Proof-only issue”として成立した年号であり、制度転換の過程を示す資料としての性格が市場から丁寧に評価されている。

さらに、ワイオン後期の造形語法が純粋な形で反映されている点、プルーフ銀貨として視覚的完成度が高い点、そして保存状態のばらつきが大きい中で安定した評価を得やすい点などが、長期的な需要の支えとなっている。1840年代の植民地試作貨は、純粋な希少性だけでなく、意匠・制作背景・技術的特徴が複合した評価軸によって支えられており、本コインもその例にあたる。

総じて、1849年パターン・ルピーは頻繁に市場へ供給されるタイプではなく、良質な保存状態の個体が出現した際には、制度史・造形・状態を重視する収集家層の関心を集めやすい。短期的な相場変動に左右されにくく、むしろ歴史的文脈と造形的完成度が評価を安定させる傾向にある点が、このコインの市場における特性といえる。

【希少性】

1849年ルピーは、流通を目的とした量産が行われなかった「Proof-only issue」であり、そもそもの製作枚数がきわめて限定的であったと考えられている。東インド会社による貨幣制度再編の過渡期に位置する年号であるため、実験的性格を帯びたパターン銀貨として扱われ、現存個体は総体として多くはない。

複数の主要カタログ(Pridmore、Stevens & Weir など)がこのタイプをパターンとして分類していることからも、当時の造幣が通常の流通貨とは異なる目的で行われたことが読み取れる。製造枚数の記録は残されていないものの、19世紀中葉のロンドン製プルーフ銀貨全般が抱える「小規模生産・限定用途・保存環境の差」という三つの条件から、オリジナルの姿を保った個体が現在まで伝わる例は自然と限られたものになる。

NGCへの登録数も決して多くなく、プルーフ銀貨特有の経年変化や取扱いの影響により、高い保存状態で生き残った個体はさらに絞られる。本コインのようにPR64に到達した例は、19世紀前半のパターン銀貨としては上位帯に属するものであり、造形の鮮度と打刻の強さが良好に維持されている点が注目される。

1849年パターン・ルピーは、英国本国のヴィクトリア貨とは異なる植民地仕様の独自体系に属し、意匠・制度史・制作背景が複合した稀少性をもつ。そのため、「枚数が少ない」だけでなく「成立事情そのものが例外的である」ことが価値の核となっており、コレクションの中では体系を象徴する要点として扱われることが多い。

【鑑定・保存状態】

NGC PR64 の評価を得た本コインは、プルーフ銀貨に特有のミラーとフロストの均衡がよく保たれており、表面全体に落ち着いた透明感と静かな奥行きが感じられる。金属面にはブルーからパープル、さらにゴールドへと緩やかに移ろう虹彩が広がり、人工的な処理では得られない自然な経年変化がきわめて穏やかな階調をつくり出している。この虹彩はワイオン作品に見られる線刻の明晰さを強調し、肖像や月桂冠の陰影に柔らかな深みを与えている。

オブバースでは、髪束や頬の起伏、輪郭線の彫りが鮮明に残り、打刻自体の強さと素材の状態が良好であることがうかがえる。リバースでは、月桂冠の葉脈が細部まで確認でき、額面文字と地域書体のエッジも崩れがなく、プルーフ打ちの特徴がはっきりと保たれている。パターン銀貨では、保管環境による摩耗・曇り・局所的な酸化が生じやすいが、本個体にはそれらの影響は限定的で、表面の静かな輝きが全体の印象を整えている。

PR64 は、1849年ルピーの現存個体の中でも視覚的に均質な上位帯に属する評価であり、同年式においてこれ以上のグレードが確認されていない点からも、保存状態として高水準に位置していることがわかる。虹彩・線刻・打刻・鏡面の四要素が無理なく調和し、パターン貨としての緊張感と美術的魅力を共に伝えている点に、この個体の価値がある。

本コインは、1849年というインド貨幣統一の前夜に生まれた、制度史と美術史が重なり合う稀少なパターン銀貨である。流通を前提としない Proof-only issue であることから、造幣局が試作段階で示そうとした理念が、より純度の高い形で可視化されている点に特徴がある。若いヴィクトリアの端整な肖像、英語と地域書体を併置した穏やかな裏面構成、月桂冠の抑制された象徴性──いずれもが、広域統治という複雑な現実と、それを視覚的に整理しようとする19世紀中葉の造幣局の姿勢を静かに物語っている。

ワイオンの古典主義的語法が、植民地行政の文脈でどのように転調されうるのかを示す例としても興味深く、英国本国貨とは異なる美術的位相を持ちながら、その根底には一貫した造形理念が息づいている。過度な華美に走らず、象徴を整然と並置し、文化と行政の多層性をひとつの面に調和させるという態度は、彼の国際的活動の幅を感じさせるものでもある。

保存状態も健全で、穏やかな虹彩が線刻の明晰さを包み込み、パターン貨特有の緊張感を過度に損なわずに残している。PR64という上位帯の評価は、1849年ルピーの現存個体の性質を踏まえても十分に重みがあり、意匠・資料価値・保存状態が高い水準で重なり合っている。

1849年プルーフ・ルピーは、単なる試作貨ではなく、帝国行政・象徴表現・造形美の三要素が静かに交差する節点として、長期的観賞に耐える深さを持つ。イギリス領インドの貨幣史を見渡すうえでも、またヴィクトリア期における王立造幣局の美術的実験を理解するうえでも、独自の光を放つ一枚であり、コレクションにおいて中核的な位置を与えられうる作品である。

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