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ザルツブルク大司教領 1687年 10ダカット金貨 聖ルペルトと聖ヴィルギル図 NGC MS62(Top Pop)

ザルツブルク大司教領 1687年 10ダカット金貨 聖ルペルトと聖ヴィルギル図 NGC MS62(Top Pop)

ザルツブルク大司教領 1687年 10ダカット金貨 聖ルペルトと聖ヴィルギル図 NGC MS62(Top Pop)

¥21,589,500

informations de base
発行地: オーストリア/ザルツブルク大司教領
年 号: 1687年
額 面: 10ダカット金貨(Gold 10 Ducats)
品 位: 金 0.986(ザルツブルク大型ダカット標準)
重 量: 34.80 g(カタログ・実測値)
直 径: 約41.5 mm(参考値・要実測)
鑑 定: NGC MS62(Top Pop 1/1)鑑定番号 2088746-018
文 献: Friedberg 823 ほか(Davenport・Montenuovo・KM 等の標準カタログ参照)

demande de renseignements

本コインは、1687年銘として知られるザルツブルク大司教領の大型金貨で、重量34.80グラムに達する10ダカットの多量目金貨である。大司教領における最も格式の高い金貨種の一つであり、一般流通を目的とした貨幣ではなく、儀礼用・贈答用・外交的用途を担った特別鋳造のカテゴリーに属する。

1687年は、ザルツブルクにおいて大司教マクシミリアン・ガンドルフ(在位1668–1687)からヨハン・エルンスト・フォン・トゥーン(在位1687–1709)へと権力が移行した年に当たり、政治的にも宗教的にも節目にあたる。主要カタログでは本種は一貫してヨハン・エルンスト治世の一連として整理されているが、年号そのものはガンドルフ没年と重なっており、編年的にはガンドルフ時代からの連続性のなかに位置づけられる。このため、本コインはガンドルフ治世末期とヨハン・エルンスト治世初期の狭間に打たれた作品として理解され、ザルツブルク大司教領の権力継承期を象徴する希少な大型金貨といえる。

表裏ともに極めて高密度のバロック装飾が施されており、表面には複数区画から成る大司教複合紋章、裏面には都市の守護聖人である聖ルペルトと聖ヴィルギルが雲上に並び立つ象徴的構図が刻まれる。金地に深く彫り込まれた線は17世紀ザルツブルクの宗教文化と美術の成熟を物語り、本金貨が儀礼用として特別に打たれたことを裏付ける。

さらに本コインは、現時点でNGC鑑定において唯一のMS62として登録されており(Top Pop 1/1)、大型金貨としては例外的に良好な保存状態を示す。重量・造形・編年・美術性・希少性のいずれにおいても、ザルツブルク金貨を代表する位置に立つ一枚である。

Surface (avers).

表面には、当時のザルツブルク大司教を象徴する複合紋章が大きく刻まれている。中央の盾は、ヨハン・エルンスト(Johann Ernst von Thun)の家系紋章ザルツブルク大司教区の紋章を組み合わせた構成で、複数の区画に細分された典型的なコンポジット・アームズ(複合盾)となっている。これにより、大司教個人としての家系的アイデンティティと、大司教区を統治する霊的権威とが一体となった地位が、視覚的に示される。

盾の上には、カトリック高位聖職者の紋章に用いられる広つば帽ガレロが置かれ、その左右には多数のタッセル(房飾り)が段状に垂れ下がる。タッセルの数と段数は大司教の階級を示すもので、単なる領主の紋章とは異なる聖職者としての格式が象徴的に表現されている。ガレロとタッセル、複合盾という組み合わせは、17世紀のザルツブルクにおいて宗教権威と領邦君主性を兼ね備える存在である大司教を示す定型的な紋章体系である。

盾の周囲には細かなビーズ状の縁取りと、ロープ状のインナーリングが巡り、その外側にラテン語銘文が刻まれる。
銘文は「IOAN : ERNESTVS D : G : ARCHIEP : & PRPS SALISB : S : SED : AP : LEG :」と読むことができる。
これは略号を補うと
IOANNES ERNESTUS Dei Gratia Archiepiscopus et Princeps Salisburgensis, Sanctae Sedis Apostolicae Legatus
となり、「ヨハン・エルンスト、神の恩寵によるザルツブルク大司教およびザルツブルクの君主、聖なる使徒座(ローマ教皇庁)の使節」を意味する。宗教的権威(Archiepiscopus)と領邦君主(Princeps)という二重の役割が、典型的なバロック期の略号によって簡潔に示されている点は、この時代のザルツブルク金貨に特有の厳かな趣を与えている。

年号「1687」は盾の左右に「16」「87」と分かれて刻まれ、構図全体に左右対称の整然さを与えている。縁部の連続する花文様・点刻・ロープ状の装飾は、17世紀ザルツブルクの金貨に見られるバロック的装飾語彙そのもので、金地の上にごく細密に彫り込まれた要素が、儀礼用多量目金貨としての格式を一層高めている。

Inverse (inverse)

裏面には、ザルツブルクの守護聖人として崇敬されてきた聖ルペルト(Ruprecht/Rvdbertus)聖ヴィルギル(Virgilius)の二人が並んで座する姿が大きく刻まれている。二人の周囲には柔らかな雲が広がり、背後には光輪が放射状に描かれ、天上界の静謐な空気の中で都市ザルツブルクを見守る存在として造形されている。

向かって左側の聖人は聖ルペルトで、左手には樽(塩壺とも解釈される)を抱えている。この樽は、ザルツブルクの語源となった「塩(Salz)」を象徴し、古来から同地の経済的基盤であった岩塩採掘および塩交易の富を暗示する図像である。右手には司教杖(クロージャー)を持ち、ザルツブルク最初期の司教としての権威を示す。

向かって右側の聖人は聖ヴィルギルで、アイルランド系の学僧として知られ、8世紀にザルツブルクの教会制度を整えた人物である。クロージャーを持つ一方、足元には教会建築が細密に描かれている。これはザルツブルク大聖堂や大司教座聖堂を象徴し、都市そのものの精神的守護者としての役割を示す。建物の塔・屋根・窓が大径金貨ならではの鋭い彫りで表現され、都市景観を凝縮したような視覚的密度を作り出している。

周囲には「SS : RVD BERTVS · ET · VIRGILIVS · PATRONI · SALISBVRGENSES」と読むラテン語銘文が刻まれ、「聖ルペルトと聖ヴィルギル、ザルツブルクの守護者たち」を意味する。Patroni という語は天上の保護者・守護者(patron saints)を指し、ザルツブルクの精神的中心を象徴する二人の位置づけを端的に表している。

二人の聖人は雲の上に静かに座し、その下に都市の象徴(教会建築)が配されるという構図は、中世以来の「天上から都市を保護する守護聖人」という図像形式を継承している。バロック期の技法で再解釈されたこの構図では、衣文のひだの流れ、雲の柔らかな膨らみ、クロージャーの渦巻き、光輪の細線が、金の表面に深く刻み込まれており、金貨でありながら宗教画的な荘厳さが漂う。

リバース全体は、儀礼用・顕彰用の多量目金貨にふさわしい天上界の静けさと都市の象徴性によって構成され、ザルツブルクという都市国家が持つ宗教的アイデンティティを凝縮した場面となっている。オブバースが現世権力(大司教・君主)を示すのに対し、

裏面は精神的権威(守護聖人)を示し、この10ダカットが当時のザルツブルクの二つの顔 霊性と統治 を一枚に統合した象徴的作品であることが明瞭に示されている。

歴史的背景

ザルツブルクは、近世神聖ローマ帝国における大司教領邦の一つであり、大司教が宗教指導者であると同時に世俗の君主(プリンツ)として君臨する、典型的な聖俗併合国家であった。塩の交易によって蓄えられた富を背景に、17世紀には大規模な都市改造と教会建築が進み、「北のローマ」とも呼ばれるバロック都市景観が形成されることになる。

1687年という年は、その政治史・宗教史のうえでも特別な意味を持つ。長期にわたり大司教領を統治したマクシミリアン・ガンドルフが没し、その後任としてヨハン・エルンスト・フォン・トゥーンが選出された年である。ガンドルフ時代に進められたバロック化の流れを、ヨハン・エルンストが引き継ぎつつ自らの方針で再構成していく、その端境期にあたる。

本コインの銘文に刻まれた「IOANNES ERNESTUS」の名は、この権力移行がすでに制度として定着した後に打たれたことを示している一方、編年上はガンドルフ時代からの連続性のなかで理解されることが多い。その意味で、1687年10ダカットは「二人の大司教の時代をまたぐバロック・ザルツブルクの象徴」として位置づけられる。

裏面に描かれた聖ルペルトと聖ヴィルギルは、それぞれザルツブルクの起源と教会制度の整備に深く関わった守護聖人であり、足元に描かれた教会建築は、都市そのものと大司教座聖堂の威容を象徴している。
すなわち本コインは、

・塩と信仰によって築かれた都市の歴史
・二人の大司教による権力継承期
・バロック芸術の成熟
この三つの層を同時に背負う歴史的資料として読むことができる。

デザインと象徴性

本コインのデザインは、ザルツブルク大司教領が担った「二重の権威」すなわち宗教的権威と領邦君主としての地位を、表裏で対照的に示す構成になっている。
表面の複合紋章は、大司教個人の家系紋章と大司教区そのものを象徴する紋章を組み合わせて構成され、ガレロとタッセルが高位聖職者の公式紋章としての格式を付与する。これは、大司教が単なる宗教指導者ではなく、神聖ローマ帝国における一領邦君主であったという政治的現実を視覚的に表すものである。

裏面では、聖ルペルトと聖ヴィルギルの二人が雲上に並坐し、その足元には大司教座聖堂を象徴する教会建築が刻まれるという、ザルツブルク固有の宗教的図像が用いられている。聖ルペルトの樽は塩の富を、聖ヴィルギルの足元の教会は都市の宗教的基盤を象徴し、ザルツブルクという都市国家の歴史が二人の聖人によって象徴化されている。雲と光輪は天上界を示す典型的な図像であり、都市が聖人の加護のもとにあることを表す構成は、中世以来の伝統がバロック的語法によって再解釈されたものである。

表裏合わせて見ると、この10ダカットは「現世の統治と天上の守護」を一枚の金貨に同時に収めた構造になっており、17世紀ザルツブルクの政治・宗教・芸術が密接に結びついた文化的特質が凝縮されている。多量目金貨としての堂々たるサイズと重量は視覚的効果をいっそう高め、儀礼用金貨にふさわしい荘厳さと権威を備えた仕上がりとなっている。

 

市場評価

ザルツブルク大司教領の多量目金貨、とりわけ10ダカット級は、国際市場全体を見渡しても出現頻度がきわめて低いカテゴリーに属する。年間を通じて大型金貨のオークションが数多く開催されるなかでも、本種のような儀礼用10ダカットがカタログに姿を見せるのは、ごく限られた機会にとどまる。

その中でも、1687年銘の10ダカットは、権力継承期という特異な編年的背景と、聖ルペルト/聖ヴィルギルという象徴性の高い主題を併せ持つため、ザルツブルク金貨コレクションのなかでも核となるピースとして扱われることが多い。今回のように国内大手オークションで積極的な入札競争が生じたことは、国内外のコレクターがこのタイプをシリーズの頂点級として認識していることの証左といえる。

ヨーロッパのバロック期大型金貨の分野では、
・宗教都市(ザルツブルク、ウィーン、プラハなど)の儀礼用金貨
・10〜20ダカット級の多量目金貨
という二つのテーマが長期的に安定した需要を保っている。
本コインはその両方に該当し、さらにNGCにおいて唯一のMS62として登録されるTop Pop個体であることから、同タイプのなかで実質的な基準点となる一枚として市場から評価されている。金額の多寡だけでなく、カタログ上の位置づけや今後の引用頻度を含めて、長期的に重要なリファレンスとなる可能性が高い。

希少性

Friedberg 823 に分類される本タイプの10ダカットは、文献上しばしば「大いなる稀少品(von großer Seltenheit)」と表記されており、平打ちダカットや通常のターレル金貨とは明らかに異なる希少性のレベルに置かれている。発行目的が儀礼用・贈答用に限られていたこと、10ダカットという大容量ゆえに鋳造枚数自体が極めて少なかったことが、その背景にある。

近年の国際オークション記録を見ても、同タイプの10ダカットが出現するのは長いスパンで見て数例にとどまり、さらに高グレードの個体はごく限られている。NGCの鑑定人口においても、本コインはMS62が唯一の登録であり、それ以上のグレードは確認されていない。つまり、「Top Pop 1/1」のラベルは単なる付加価値ではなく、現存個体群の分布をそのまま反映したステータスと考えてよい。

文献レベルのレアリティ記号を機械的に当てはめることは避けるべきだが、実際の出現頻度・市場での体感・既知のオークション履歴などを総合すると、感覚的にはR5(現存5〜10枚)相当のイメージで捉えるのが妥当と思われる。特に1687年銘・聖ルペルト/聖ヴィルギル図の組み合わせ・NGC MS62(Top Pop)という条件をすべて満たす個体は、今後の市場においても再登場が期待しにくいレベルの希少性を備えている。

鑑定・保存状態

NGC MS62というグレードが示す通り、全体のディテールは良好に保たれており、実用的な摩耗は最小限にとどまる。瞳や衣文の細い線、大聖堂の窓や塔の構造など、繊細な彫刻箇所まで視認でき、儀礼用多量目金貨としての造形の質がはっきりと感じられる。

・表面(紋章面):
ガレロのタッセルや複合盾の各区画は鋭く残り、打刻は深く均質。楕円盾を囲む装飾リングもほぼ完全に確認できる。フィールド部分には軽いヘアラインが見られるものの、10ダカットという大面積を考慮すればきわめて健全な状態といえる。全体として、金地の光沢と打刻の立体感が良好に保たれている。

・裏面(二人の聖人):
聖ルペルトと聖ヴィルギルの顔立ち、司教杖の螺旋、教会建築の窓枠や屋根の段差など、最も細かい彫刻部分の残存度が高い。雲のモデリングも柔らかく、金地の上に自然な起伏が生まれている。大判金貨の裏面としては、極めてバランスの良い保存状態といえる。

34.80gという重量にもかかわらず、縁の打痕やフラットニングは限定的で、全体として金貨特有のサテン状の光沢がよく保たれている。大型金貨にありがちな重量由来の劣化が少ない点は、本品の保存状態の良さを裏付けるものといえる。

1687年という編年の特異性、表裏に刻まれた図像の象徴性、そして多量目金貨としての存在感。そのいずれの点から見ても、本コインはザルツブルク大司教領の大型金貨を代表する位置に立つ作品である。レジェンドが「IOANNES ERNESTUS」と明確に刻まれ、権力移行期の鋳造であることが裏付けられる一方で、編年上はガンドルフ時代の終わりと重なり、解説や紹介の場面ではガンドルフの時代と結びつけて語られることも多い。この銘年が持つ歴史的文脈の重層性が、本コインの独自性を際立たせている。

さらに、NGCにおいて唯一のMS62として登録されるTop Pop個体である点は、現存個体のなかで際立った位置にあることを示しており、保存状態・視覚的美観・資料価値の三要素が高い水準で揃った例といえる。大型金貨に見られがちな重量由来の劣化も少なく、表裏の細部が驚くほど良好に残存している点は、本種の美術的評価をさらに高めている。

ザルツブルクの歴史、バロック期宗教芸術、そしてヨーロッパ多量目金貨の魅力を一枚の金貨で味わうことができる本コインは、単なる貨幣以上の文化的資料としての価値を備えている。長期的な視点で見ても、シリーズ全体の中核となる作品であり、今後の書籍・カタログ・研究において引用され得る基準個体としての意味を持つ。儀礼用金貨としての格式と、都市ザルツブルクの精神的・政治的アイデンティティを体現する一枚である。

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